荻窪講談第19回公演、肌寒さも感じられる時候ながら、今回も多くの皆様のお運びを頂き、大盛況のうちに終演いたしました。ご来場ありがとうございました。
恒例、紅指導による「講談やってみまショー」からの開演です。お客様に大きな声を出して頂き、講談の一節を講釈する練習を行います。これにより「講談を聴く耳」ができ、講釈師の話芸もより聞きやすくなり、理解が深まります。今回は紅の演目「菅原道真公」の一節、有名な格言「栴檀は双葉よりも芳し」を用いた講釈です。何度もお運び頂いているお客様も増え、お客様の声も最初から大きく、紅の軽妙なリードの下、笑い中にも熱の入った練習となりました。会場も温まり、荻窪講談スタートです。
前回に引き続き、松麻呂が先陣をきり、武芸物「山本源藤次」で幕開けです。宮本武蔵伝の中、武蔵と剣を交えることになる剣の達人「山本源藤次」との出会いの一節です。会いたい一心でついた武蔵の嘘を、暖かく迎え入れる源藤次の人格者ぶり、応対する道場者の右往左往が滑舌よく語られ、派手な立ち会いもない中でも、緊張感のある講釈となりました。この後、両者の立会がぜひ聴きたいとなる中、お時間となりました。
続いては紅佳による「太閤と曽呂利」。「太鼓持ち」の語源になったと言われる関白秀吉の御伽衆、「曽呂利新左衛門」の出世話。公家衆との句会でピンチを迎えた秀吉を、機智に満ちた答えを授けて救い、信頼を得る様を、紅佳がハツラツと語りました。無邪気でわがままな秀吉の様が、紅佳によって強調して演じられ、喜怒哀楽の表情が見えるような楽しい講釈となりました。
中入り前は荻窪講談二度目の登場となる、昌味による「左甚五郎水呑みの龍」。「眠り猫」等で有名な左甚五郎の出世話です。売出し中の甚五郎が、依頼された上野寛永寺鐘つき堂支柱の龍を、悩みながら奇跡的な体験で掘り上げます。出来栄えの素晴らしさから池の水を飲む逸話までの伝説話が、昌味によってまさに生き生きと語られ、大きな拍手を頂きました。
中入り後は、前回に続いての登場、茜による脚色講談「牡丹燈籠 秋のお札はり」。有名な怪談の「お札はがし」の一節を明るく脚色。悲壮感のない幽霊お露と姥が、毎夜恋い焦がれる萩原新三郎宅へ通う様を、茜らしくコミカルに演じました。作家でもある茜により、悲劇的な最後もポジティブに脚色され、愛に溢れるラブストーリーに転じました。笑いの中、観客も思わずお露を応援したくなるような明るい悲話に大きな拍手を頂きました。
大トリ紅は、自ら描き下ろした講談、「令和ゆかりの天神さま・菅原道真公」。福岡出身の紅が、自ら調べ史実を書き起こした渾身の新作講談です。幼少より飛び抜けた才能と徳を備えていた学問の神様、道真公が、平安時代に政治家として出世していく中、記録に残された様々なエピソードが紅の名調子で語られました。誠実で有能であるが故に、権力者藤原氏の追い落としに会い、太宰府への左遷される有名な悲劇。その中でも、地元の民に慕われ、彼の地を愛した道真公の生涯が、紅から情熱的に語られました。歴史ロマンに溢れた現代講談にお客様も大満足したようで、万雷の拍手を頂き大団円となりました。
今回もご来場ありがとうございました。次回、第20回公演は来年2020年5月14日(木)です。またのご来場をお待ちしています。
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