荻窪講談第18回公演、令和改元後初の公演です。今回も多くの皆様のお運びを頂き満員となり、大盛況のうちに終演いたしました。ご来場ありがとうございました。
今回は、人気講談師神田松之丞の弟子である、松麻呂が初お目見えとなりました。
恒例、「講談やってみまショー」よりの開演。紅指導により今回は松麻呂の演目でもある「井伊直人」の別話、「伊達家の鬼夫婦」より夫婦による木刀と薙刀の立ち会いの様子をレッスンいたしました。紅の軽妙な語りで場内が笑いに包まれつつ、お客様の声も次第に大きくなり、素早い立ち回りの様子と、夫を軽々打ち負かす妻の勝気なセリフが会場に響き渡りました。会場もすっかりあたたまり、講談を楽しもうという雰囲気に包まれた中での演目開始です。
前座の松麻呂による「井伊直人」で幕開けです。藩の剣術指南役でありながら、博打で身を滅ぼしそうな夫、井伊直人。それを自らの薙刀で打ち負かすことにより剣の修業へ導く屈強な妻。翻弄されながらも修行に励み剣豪へと成長する過程と夫婦の絆をユーモラスに語ります。通る声とはつらつとしたその語り口で、豊かな将来性を感じさせる一席に、大きな拍手を頂きました。
続いてはおなじみ紅佳による「西太后」。世界史の中でも屈指の悪女として有名な女帝ですが、低い身分の出身ながら皇帝に見初められ成り上がっていく様を、明朗な語り口で講釈します。その贅沢ぶりや暴君ぶり、そしてその孤独な葛藤を、見てきたように語りました。その政治力には評価もありましたが、欧米列強侵略や日清戦争、義和団の乱など翻弄され、270年近く続いた清王朝を滅亡に導いた女傑の生涯を鮮やかに読み終わり、大きな拍手を頂きました。
中入り前には大御所阿久鯉による「水戸黄門記 出世の高松」。水戸光圀の腹違いの兄にあたる頼重の出生と不遇な母おしまにまつわる人情噺。太く響く名人芸で語られるその講釈に、会場全体が引き込まれました。貧乏長屋の育ての親夫婦の軽妙なやり取りと、たくみなネタはずしで大きな笑いも起こり、大団円の結末での読み終わりに、会場も大満足、拍手喝采です。
中入り後は、久しぶりの荻窪お目見えとなる人気講談師、京子による「番町皿屋敷」。おなじみの怪談話ですが、様々な芸や顔を持つ京子ならではの表現力で、二人の男の悪くどさに翻弄され殺されてしまうお菊の悲劇的な末路を語りました。闇夜をまとったような着物と、剛柔たくみに使い分ける語りで会場を引き込み、観客を怒りや悲しみ、恐怖へと導く怪談エンターテイメントの醍醐味を味あわせ万雷の拍手を頂きました。
そして大トリ紅です。今回は、芥川龍之介の短編小説「お富の貞操」を師匠神田山陽が脚色し、立場を変えたモノローグ講談に仕立てたというモダンな演目です。災害を起こす豪雨のごとく、全編に重く張り詰めた空気が漂う異色の演目で、緊張感が最後まで解けない芝居を見ているような新しい講談の世界。会場は戸惑いながらも新たなエンターテイメントを堪能し、最後は話芸の奥深さを感じ拍手喝采で大団円です。
今回もご来場ありがとうございました。次回19回公演は来年2019年11月6日(水)です。またのご来場をお待ちしています。
(写真はクリックで拡大し、拡大後矢印で次に飛びます)