今回も多くの皆様のお運びを頂き、第14回の公演も大盛況のうちに終演いたしました。ご来場大変ありがとうございました。前回第13回に、真打ち披露を行い、病気休養に入っていた神田紅葉が、急所登壇というサプライズがありました。
演目はみのり「桃井源太左衛門」から開始、宮本武蔵を主人公とする武芸物「寛永宮本伝」の13話、さわりのみの披露でしたが、楽しく力強い話芸で、続きがとても聞きたくなる熱演でした。続いては真紅による「常陸山谷右エ門」。新横綱稀勢の里の枕から、明治時代、水戸の伝説的力士の出世話。同郷の真紅による水戸愛に溢れる熱弁が光りました。
その後紅が登場、末期癌と戦う講談師として幾多のメディアに取り上げられていることを紹介し、飛び入りの紅葉の登場となります。演目は小泉八雲による有名な「耳なし芳一」。病を微塵も感じさせない力強く流暢な語りで、30分に渡る話を、聴衆釘付けに語りきりました。正に真打ちの講釈と会場からも万雷の拍手が湧きました。
中入り後は、京子の登場、自身の初産体験の枕から、演目は軍記物「源平盛衰記」より「青葉の笛」。源平合戦、平家滅亡が近づく中、一ノ谷の戦いにおいて源氏の武将熊谷次郎直実が平家の若武者、平敦盛を自責の念にかられつつ打ち取る姿を悲哀に溢れた語りで演じました。
大トリ前の鯉風は、「江戸元祖練り羊羹」。江戸の時代、出世払いを約束する「出世の証文」に悩まされつつ大成功を収める生真面目な商人、淡路屋喜三郎の出世話。鯉風のテンポのよく軽妙な名人芸が聴衆を唸らせました。
大トリ紅は、「春日局 家光養育」。徳川三代目将軍の座を有望視された竹千代(のちの家光)でしたが、その座が危なくなる中、乳母であったお福(のちの春日局)の熱意と竹千代の器量により、大御所家康のお墨付きをもらうまでの騒動顛末記。それぞれのキャラクターの個性が光る楽しい名人芸に会場も大いに湧きました。お客様から万雷の拍手をいただきまして大団円です。今回もご来場ありがとうございました。次回15回公演は来年平成29年11月1日(水)です。またのご来場をお待ちしています。
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月別アーカイブ: 2017年5月
第14回荻窪講談演目補足情報
「時代物」である講談は、時間の制約もあり長編物語の一節のみ演じられることが通常です。そのため、その物語の時代背景や大まかな全体ストーリーを知っていると、より深く講談を楽しむことができます。
今回は来る、5月18日(木)に行われる第14回荻窪講談の演目補足情報を掲載いたします。こちらをお読み頂き、それが演者によってどのように語り演じられるかを楽しみに、ぜひご来場ください。
※下に講演のパンフレットPDFファイルあります。
『桃井源太左衛門』 みのり
寛永宮本伝は、十七話からなる長いお物語で『桃井源太左衛門』はその十三話目。講談では剣豪を主人公とするお話を総じて「武芸物」と言います。なかでも「宮本武蔵」は人気の演目ですが、同じ人物を主人公とする物語でも、流派ごとにその時代背景やストーリーは異なります。神田派が伝承する『寛永宮本武蔵伝』は、絵本を元に創作されたといわれるもので、丁々発止の打ち合いの中で奇想天外な必殺技が次々と飛び出す楽しいお話です。
『常陸山谷右エ門』 真紅
水戸をこよなく愛す講談師、真紅の新作講談。明治期の相撲界を大いに沸かせた同郷のスーパースター、常陸山谷右エ門の一代記です。常陸山谷右エ門は明治23年(1890年)に出羽ノ海親方の元へ入門、とんとん拍子の出世を重ね明治36年(1893年)には第19代横綱に。同時に昇進した梅ヶ谷藤太郎と共に、明治相撲の黄金期を築きあげます。引退後は、後進の育成に力を注ぎ、わずかの間に出羽ノ海部屋を一大勢力に拡大し、数々の横綱を排出。その見事な手腕は「角聖(かくせい)」「御大(おんたい)」と称賛されています。
『青葉の笛』 京子
『青葉の笛』は、源氏と平家の繁栄から滅亡までを全48巻に収めた「源平盛衰記」の中のお話。講談をはじめ歌舞伎や詩吟などでも広く知られ、かつては文部省唱歌としても歌われていました。講談では『青葉の笛』は軍記物と呼ばれるジャンルです。軍記物は、戦の様子を独特の口調で描写する「修羅場」が楽しみどころです。ちなみに「源平盛衰記」は、赤松法印という僧侶が徳川家康公の前で語り、それが講談のルーツとなっております。
『江戸元祖練り羊羹』 鯉風
本作は、「出世の証文」としても知られています。出世証文とは、「出世払い」を約束する借用証書のことで、失敗して返済できなくなった債務者が債権放棄を依頼し、それが容認されたとき、将来、出世後には改めて借金を返済しますという約束をした証文です。主人公・淡路屋喜三郎のモデルは、日本橋で将軍家御用の菓子屋を開いていた「紅谷志津摩(べにやしづま)」だといわれています。
『春日局 家光養育』 紅
竹千代を溺愛したことで知られる春日局こと乳母のお福。その愛情エピソードには枚挙にいとまがありません。幼少時代は虚弱だった竹千代のために小豆、麦、粟などを取り入れた「七色飯」というスーパーフードを考案、健康管理に努めます。また成人し家光となった後、26歳で天然痘を患うと「薬断ち」を誓い命がけの願掛けを致します。やがて家光は回復するものの、以後お福は自分が病気のときにも一切薬を飲まなかったというのは有名なお話です。