今回も多くの皆様のお運びを頂き、第13回の公演も大盛況のうちに終演いたしました。ご来場大変ありがとうございました。今回は神田紅葉真打披露公演ということで、たのはぐ会より寄贈した記念幕をバックに開催されました。最初に、またも起こし頂いた福島県矢吹町の町長、議長と、たのはぐ会八重幡会長、神田紅と登壇し、恒例の義援金の贈呈を行いました。
演目は紅佳の「曽我物語」から開始、曽我兄弟の仇討名場面が熱演され、開場も温まりました。続いては蘭による「鼓ヶ滝」、和歌の名手と知られる西行法師の不思議な体験が、蘭の軽妙な芝居で綴られました。山吹は最も旬な真田幸村がらみの「猿飛佐助」。忍びとして幸村に出会うまでの数奇な話、山吹の生き生きした佐助が光りました。
茜はお馴染みの創作講談、婚期を逃したバスガイドの悲哀をコミカルに語りました。開場に笑いも起こり講談会も華やぎました。そして中入りには、壇上に出演者後援者が揃い踏みし、今回の主役、紅葉の真打ち披露口上が神田一門により行われました。
中入り後は、師匠紅がトリ前に初登場。お馴染みの赤穂浪士伝より、今回は「堀部安兵衛の妻」。四十七士最長老であった安兵衛が妻の内助と愛に支えられ討ち入りを果たす涙の物語、紅の熱演も今日ばかりは次を支えるものとなりました。
そして大トリは真打ち紅葉の登場です。演目は「樋口一葉作 大つごもり」貧しくも健気に生きる少女の葛藤にはらはらし、最後はほろりとさせれました。紅葉一世一代の襲名披露公演にふさわしい熱演で、お客様からも万雷の拍手をいただきまして大団円です。今回もご来場ありがとうございました。次回公演は来年平成29年5月18日(木)です。またのご来場をお待ちしています。
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月別アーカイブ: 2016年11月
第13回荻窪講談演目補足情報
「時代物」である講談は、時間の制約もあり長編物語の一節のみ演じられることが通常です。そのため、その物語の時代背景や大まかな全体ストーリーを知っていると、より深く講談を楽しむことができます。今回は来る11月2日(水)に行われる第13回荻窪講談の演目補足情報を掲載いたします。こちらをお読み頂き、それが演者によってどのように語り演じられるかを楽しみに、ぜひご来場ください。 ※下に講演のパンフレットPDFファイルあります。
「曽我物語」 紅佳
時代は、平安末期から鎌倉初期にかけてのお話し。将軍、頼朝公を敵に回した伊藤祐親(すけちか)の孫として辛酸を舐め尽くしながらもたくましく成長した曽我十郎祐成(すけなり)、曽我五郎時致(ときむね)の兄弟が、富士の裾野で父の敵、工藤祐経(すけつね)を仇打つ。この史実は、歌舞伎、能、浄瑠璃などに姿を変え後世にまで語り継がれてきましたが、特に江戸の歌舞伎では初春狂言に曽我物をかけるのが慣例となるほどの人気の演目となりました。
「鼓ヶ滝」 蘭
平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した歌僧、西行。23歳で武士の暮らしを捨て出家、以来、諸国を行脚し数々の歌を残しました。勅撰和歌集では『詞花集』に初出(1首)。『千載集』に18首、『新古今集』に94首(入撰数第1位)をはじめとして二十一代集に計265首が入撰した和歌の天才。そんな西行の説話や伝説は、能や長唄、落語として語り継がれています。
「猿飛佐助」 山吹
戦国時代の武将、真田幸村に仕えた勇士として知られる、猿飛佐助。実はこの人、架空の人物。大正3年(1914年)、講談師の玉川玉秀斎が講談を書籍にして発刊した「立川文庫」の第40編に『真田三勇士 忍術名人 猿飛佐助』を書き下ろしたのが佐助誕生のきっかけです。以来、昭和初期に至るまで、超人的な身体能力と目にも鮮やかな忍術を駆使するスーパーヒーロー猿飛佐助の武勇伝は、講談はもちろん、数多くの小説、漫画、映画の中で描かれてきました。
「幸せの黄色いハタ」 茜
本作は、小説家としても活躍する神田茜の「創作講談」です。創作講談の中には、歴史上の人物や、事件にスポットを当てたもの、小説や漫画など原作があるものなど、色々ありますが、茜の創作講談は現代を舞台に、実体験を元に創っています。「どちらかと言うと笑いの多い話ですので、深く考えず楽しんでいただけたらと思います」と、本人談。
堀部弥兵衛の妻」 紅
江戸幕府、5代将軍綱吉の時代。播州赤穂浅野家の浪士47名が吉良上野介の屋敷に討ち入り、その首級を挙げたというお馴染みの「忠臣蔵」は、講談では『赤穂義士伝』と呼ばれます。「刃傷松の廊下(元禄14年3月14日)」の事件から、「吉良邸討ち入り(元禄15年12月14日)」で本懐を遂げるまでを描いたのが「本伝」。47士それぞれの物語を描いたものを「銘々伝」。義士にまつわる人々のエピソードを描いたものは「外伝」と言います。本作は「銘々伝」です。
「樋口一葉原作・大つごもり」 紅葉
「大つごもり」とは、大みそかの事。明治29年に24歳で夭折した樋口一葉の短編小説『大つごもり』は、一葉がなくなる2年前に、「文學界」第24号に発表されました。自身も赤貧に苦しんだ一葉は、年の暮れから大つごもりを背景に、女中奉公をしている薄幸の娘お峰の悲哀や、貧しさの中に生まれたが故に背負わされた悲運をつぶさに描いています。