第14回荻窪講談演目補足情報

「時代物」である講談は、時間の制約もあり長編物語の一節のみ演じられることが通常です。そのため、その物語の時代背景や大まかな全体ストーリーを知っていると、より深く講談を楽しむことができます。
今回は来る、5月18日(木)に行われる第14回荻窪講談の演目補足情報を掲載いたします。こちらをお読み頂き、それが演者によってどのように語り演じられるかを楽しみに、ぜひご来場ください。
※下に講演のパンフレットPDFファイルあります。

『桃井源太左衛門』  みのり
寛永宮本伝は、十七話からなる長いお物語で『桃井源太左衛門』はその十三話目。講談では剣豪を主人公とするお話を総じて「武芸物」と言います。なかでも「宮本武蔵」は人気の演目ですが、同じ人物を主人公とする物語でも、流派ごとにその時代背景やストーリーは異なります。神田派が伝承する『寛永宮本武蔵伝』は、絵本を元に創作されたといわれるもので、丁々発止の打ち合いの中で奇想天外な必殺技が次々と飛び出す楽しいお話です。

『常陸山谷右エ門』   真紅
水戸をこよなく愛す講談師、真紅の新作講談。明治期の相撲界を大いに沸かせた同郷のスーパースター、常陸山谷右エ門の一代記です。常陸山谷右エ門は明治23年(1890年)に出羽ノ海親方の元へ入門、とんとん拍子の出世を重ね明治36年(1893年)には第19代横綱に。同時に昇進した梅ヶ谷藤太郎と共に、明治相撲の黄金期を築きあげます。引退後は、後進の育成に力を注ぎ、わずかの間に出羽ノ海部屋を一大勢力に拡大し、数々の横綱を排出。その見事な手腕は「角聖(かくせい)」「御大(おんたい)」と称賛されています。

『青葉の笛』  京子
『青葉の笛』は、源氏と平家の繁栄から滅亡までを全48巻に収めた「源平盛衰記」の中のお話。講談をはじめ歌舞伎や詩吟などでも広く知られ、かつては文部省唱歌としても歌われていました。講談では『青葉の笛』は軍記物と呼ばれるジャンルです。軍記物は、戦の様子を独特の口調で描写する「修羅場」が楽しみどころです。ちなみに「源平盛衰記」は、赤松法印という僧侶が徳川家康公の前で語り、それが講談のルーツとなっております。

『江戸元祖練り羊羹』  鯉風
本作は、「出世の証文」としても知られています。出世証文とは、「出世払い」を約束する借用証書のことで、失敗して返済できなくなった債務者が債権放棄を依頼し、それが容認されたとき、将来、出世後には改めて借金を返済しますという約束をした証文です。主人公・淡路屋喜三郎のモデルは、日本橋で将軍家御用の菓子屋を開いていた「紅谷志津摩(べにやしづま)」だといわれています。

『春日局 家光養育』   
竹千代を溺愛したことで知られる春日局こと乳母のお福。その愛情エピソードには枚挙にいとまがありません。幼少時代は虚弱だった竹千代のために小豆、麦、粟などを取り入れた「七色飯」というスーパーフードを考案、健康管理に努めます。また成人し家光となった後、26歳で天然痘を患うと「薬断ち」を誓い命がけの願掛けを致します。やがて家光は回復するものの、以後お福は自分が病気のときにも一切薬を飲まなかったというのは有名なお話です。

第13回荻窪講談演目補足情報

「時代物」である講談は、時間の制約もあり長編物語の一節のみ演じられることが通常です。そのため、その物語の時代背景や大まかな全体ストーリーを知っていると、より深く講談を楽しむことができます。今回は来る11月2日(水)に行われる第13回荻窪講談の演目補足情報を掲載いたします。こちらをお読み頂き、それが演者によってどのように語り演じられるかを楽しみに、ぜひご来場ください。 ※下に講演のパンフレットPDFファイルあります。

「曽我物語」  紅佳

時代は、平安末期から鎌倉初期にかけてのお話し。将軍、頼朝公を敵に回した伊藤祐親(すけちか)の孫として辛酸を舐め尽くしながらもたくましく成長した曽我十郎祐成(すけなり)、曽我五郎時致(ときむね)の兄弟が、富士の裾野で父の敵、工藤祐経(すけつね)を仇打つ。この史実は、歌舞伎、能、浄瑠璃などに姿を変え後世にまで語り継がれてきましたが、特に江戸の歌舞伎では初春狂言に曽我物をかけるのが慣例となるほどの人気の演目となりました。

 

「鼓ヶ滝」  

平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した歌僧、西行。23歳で武士の暮らしを捨て出家、以来、諸国を行脚し数々の歌を残しました。勅撰和歌集では『詞花集』に初出(1首)。『千載集』に18首、『新古今集』に94首(入撰数第1位)をはじめとして二十一代集に計265首が入撰した和歌の天才。そんな西行の説話や伝説は、能や長唄、落語として語り継がれています。

 

「猿飛佐助」 山吹

戦国時代の武将、真田幸村に仕えた勇士として知られる、猿飛佐助。実はこの人、架空の人物。大正3年(1914年)、講談師の玉川玉秀斎が講談を書籍にして発刊した「立川文庫」の第40編に『真田三勇士 忍術名人 猿飛佐助』を書き下ろしたのが佐助誕生のきっかけです。以来、昭和初期に至るまで、超人的な身体能力と目にも鮮やかな忍術を駆使するスーパーヒーロー猿飛佐助の武勇伝は、講談はもちろん、数多くの小説、漫画、映画の中で描かれてきました。

 

「幸せの黄色いハタ」  

本作は、小説家としても活躍する神田茜の「創作講談」です。創作講談の中には、歴史上の人物や、事件にスポットを当てたもの、小説や漫画など原作があるものなど、色々ありますが、茜の創作講談は現代を舞台に、実体験を元に創っています。「どちらかと言うと笑いの多い話ですので、深く考えず楽しんでいただけたらと思います」と、本人談。

 

堀部弥兵衛の妻」  

江戸幕府、5代将軍綱吉の時代。播州赤穂浅野家の浪士47名が吉良上野介の屋敷に討ち入り、その首級を挙げたというお馴染みの「忠臣蔵」は、講談では『赤穂義士伝』と呼ばれます。「刃傷松の廊下(元禄14年3月14日)」の事件から、「吉良邸討ち入り(元禄15年12月14日)」で本懐を遂げるまでを描いたのが「本伝」。47士それぞれの物語を描いたものを「銘々伝」。義士にまつわる人々のエピソードを描いたものは「外伝」と言います。本作は「銘々伝」です。

「樋口一葉原作・大つごもり」  紅葉

「大つごもり」とは、大みそかの事。明治29年に24歳で夭折した樋口一葉の短編小説『大つごもり』は、一葉がなくなる2年前に、「文學界」第24号に発表されました。自身も赤貧に苦しんだ一葉は、年の暮れから大つごもりを背景に、女中奉公をしている薄幸の娘お峰の悲哀や、貧しさの中に生まれたが故に背負わされた悲運をつぶさに描いています。